コーヒーミルを3年使って分かったのは、これが豆を挽く道具であると同時に、休日の朝を変える道具だということでした。
こんな人に向き、こんな人には向かない
向いている人 すでに挽かれたコーヒー豆をドリップするのでは物足りない、挽きたてでコーヒーを楽しみたい人。さらに、こだわりの道具でコーヒーを淹れる時間そのものを楽しみたい人。
向かない人 とにかく効率よくコーヒーを飲みたい人。こだわりよりタイムパフォーマンスを重視する人。
電動ミルとカリタ、二つのミルで感じた物足りなさ
最初は簡易的な家庭用電動ミルを使っていました。シンプルに楽だと思ったからです。とにかく10秒もあれば豆が挽けてしまう。ただ使っているうちに、自分の好みの粒度にするには匙加減ができず、モーター音もうるさい。見た目も調理器具のような白とえんじ色の配色で、コーヒーにこだわって豆から淹れているのに、なぜか物足りなさを感じていました。挽きたてでドリップコーヒーを飲むには、たしかに楽だったのですが。

次に使ったのが、カリタの木製の土台と受け皿に、硬質鋳鉄製の臼歯を備えたミルでした。クラシックで、まさに「コーヒーミル」と言って思い浮かぶ一番ポピュラーなデザイン。木の温もりと硬質鋳鉄の漆黒の色合いが雰囲気のあるミルで、豆を入れる口もスライドで開き、豆の粗さも軸付近にある歯車のような部品をずらして調整する。そのアナログさもレトロ感があって魅力でした。なによりハンドミルが初めてだった私にとって、時間はかかるものの、自分の力で豆を挽いている時間、手に伝わる感触が好きでした。

ただ、最初は感動していたこのミルでも、だんだんと、より細かい精度で挽いて飲み比べたい、淹れ方をこだわりたいと思うようになっていきました。
世界一バリスタの動画で、タイムモアに一目惚れした
きっかけは、とあるバリスタ世界一になった日本人バリスタのYouTube動画でした。その方がドリップコーヒーの美味しい淹れ方を紹介するなかで、聞き手と雑談しながら手慣れた手つきで準備をしていく様子が、とにかく絵になってカッコよかった。さすが世界一のバリスタだと思いながら、食い入るように動画を観ていました。
自分で焙煎した豆をコーヒー専用の計量器で測り、その豆を筒状の金属の入れ物のようなものに入れ、ハンドルの付いた蓋をつける。そう、その筒状の金属が、コーヒーミル本体だったのです。四角い木のミルしか知らなかった私は、その流れるような動きもさることながら、シンプルなデザインとライトグレーのボディカラーに目を奪われました。シックなコーヒーミルが、コーヒーを淹れているカウンターや部屋のシックな色味とマッチしていて、とにかくカッコよく見えた。そのハンドミルが、タイムモアだったのです。
世界一のバリスタが愛用するハンドミル。タイムモアで豆を挽いてからコーヒーを淹れる一連の流れがカッコよく、私もこれをやりたいと思った。それが、タイムモアを買う動機でした。
本格的なハンドミルのレビュー動画を観たとき、ハンドミルの代名詞であるコマンダンテに比べて、価格は当時で4〜5分の1。安くはないけれど、失敗しても許せる金額でした。そこで、タイムモア C2を購入することにしたのです。
3年使ってわかった切れ味と、「育てる」手入れの愛しさ
初めてタイムモア C2で豆を挽いたときの感動は、今でも忘れられません。挽くというより、刻んでいるという感覚でした。文字通り、刃で刻んでいるからこその心地よいハンドルの回し心地、削れる音、立ちのぼる香り。今まで非効率な作業でしかなかった豆を挽く行為が、コーヒーを淹れる工程のなかで、まるで茶道の儀式のような形式美をまとっていました。
そして3年経ったいまでも、切れ味は衰えることなく、快適に使えています。
筒状で、しかも細かく刻む切れ味ゆえに、カスがよく付着します。それを付属のハケで、部品をバラしながら払っていく作業が、定期的に必要になります。一見、面倒な作業です。けれど今の私には、これが時間をかけて道具を育てている感覚に変わりました。ひと手間かかるからこそ、愛着がさらに湧いてくる。手入れの時間そのものが、この道具との付き合い方の一部になっています。


かけた手間ひまの時間が、自分だけの特別な道具にしてくれる
タイムモア C2はカラーバリエーションも豊富です。ホワイトやレッド、ブラックもあるのですが、私はライトグレーと呼びたくなる色味(商品名はグレー)のボディがたまらなく好きです。表面のダイヤモンドパターンと呼ばれる凹凸加工は手に滑りにくく、触れたときの質感もいい。スケール(タイマー付き計量器)はブラックなので、両方を同じ色にすると重く感じる気がして、あえて色を変えました。これは完全に好みの問題です。
ただ、この道具を「自分だけの特別なもの」にしてくれたのは、色そのものではありませんでした。好きな色を選び、組み合わせ、そして使い込んでいく。その積み重ねた時間と手間ひまこそが、どんどん愛着を育ててくれた。使っていくほどに、同じミルのはずなのに「私だけの一台」になっていく。その感覚が、不思議と満たされる気持ちを与えてくれます。
コーヒーのためだけのスケールという贅沢
スケールも、以前は「測れればいい」としか思っていませんでした。けれど、バリスタが正確にグラム、粗さ、湯量、温度、注ぎ方にこだわり、時間まで測りながら注ぐ姿が、とにかくかっこよかった(味も大切なのに、いい歳して憧れが先行してしまっていました)。
測りとタイマーが一体化しているだけのスケールですが、「コーヒーのためだけのスケール」というところに惹かれました。それだけのために使う道具がある——その贅沢さ、とも言えますね。

休日の朝のコーヒーが、心を整えてくれる
仕事柄、朝は早く、夜も終電近い生活を送っています。それでも休日の朝、ゆっくり時間をかけて、お気に入りの道具に囲まれてコーヒーを淹れる。40代後半から感じるようになった、価値観の変化です。これこそ、コスパやタイパに囚われない、自分だけの贅沢な幸福感だと思っています。誰かと比べるものではないから、焦りも欠乏感もない。私自身は、このコーヒーの時間があることで、心が整うのだと感じています。
若い頃はタイパ、コスパとばかり考えていました。けれど45歳あたりで、時間をかけて道具を楽しむことも、コーヒーを愉しむことの一部なのだと教えてもらった。そんな経験でした。
私と同じように、仕事に明け暮れている方へ。仕事だけが人生の楽しみを与えてくれるものではない、と私は確信しています。だから「引退したら」「時間ができたら使ってみたいな」と考えている方こそ、今すぐ手に入れて、次の休みに試してほしい。最初は下手でも構いません。自分なりのコーヒータイムが、唯一無二の時間に変わっていく。その経験を、ぜひ味わってほしいのです。

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